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新たな“支配者”を求めて

今日は、おととい(12月13日)に放送していたBS世界のドキュメンタリーの話。

番組タイトルは『キルギス 遠き民主社会』。

今週から始まった“ソビエト崩壊20年”シリーズのひとつ。

 

キルギスといえば、中央アジアの国という情報ぐらいしかない。

また、歴史の授業の中で中国と関連して取り上げられるぐらい。

シルクロードを通る国、山並みに暮らす国。

私もこれくらいしか思い浮かばない。

検索して調べてみると「誘拐結婚」と言う風習もあるようだ。

気になる風習だが、今回は別の話。

 

20世紀のキルギスは、ソビエト支配下の「キルギス・ソビエト社会主義共和国」、

いわゆる社会主義国家としての歴史が大半だった。

1991年、ソ連のクーデターによって「キルギスタン共和国」として独立。

現在は、新憲法の下で「キルギス共和国」という国名になっている。

最近は、政治や社会体制が不安定で、国内に住むウズベク人との民族対立も招いている。

ソビエト支配下では、無償の教育、十分なの医療を国家から享受していた。

しかし、ソビエト崩壊後、民主主義が押し寄せてくる。

 

今回の話は、キルギスの経済、産業についての問題。

この国には主立った産業がない。

観光と農業、そして世界屈指の金鉱山である  クムトール鉱山 での採掘、鉱業だ。

クムトール鉱山を運営するのは、カナダの企業Cameco社。

そして、この鉱山の恩恵を受ける村、キルギスのバルスコン村。

住民の多くが、鉱山で働いているのである。

 

1998年に、ある事故が起こった。

クムトール鉱山向けに走っていたトラックが横転。

1,700Kgものシアンソーダが付近に流れる川、バルスクアウン川に流出したのだ。

シアンソーダ、またの名を青酸ソーダ。少量でも死に至らしめる猛毒だ。

下流に住む住民が川の水をのんで死亡するなど、多くの村民が健康被害を受けた。

バルスクアウン川が流れ込む湖では、魚が死滅するなど周囲の環境汚染にさらされた。

また、キルギス産の農作物は危険であるとの風評が農業にもダメージを与えたようだ。

加Cameco社は、現地の住民の支援のため、義援金を送るなどの補償を行ったようだ。

だが、補償が十分とはいえなかったようで、

2005年には付近住民によってクムトール鉱山へ通じる道路の封鎖が行われた。

簡単に表すと、被害住民と加害企業という単純な縮図。

実はこれだけでは表現できない社会の歪みが、両者の関係の深淵にあったのだ。

 

ソ連崩壊後、独裁政権が続いたキルギスのこの村では、

農業用機械、病院の建設、学校の建設などはすべて国がやってくれた。

誰かが物事を決め自分たちの暮らしを守ってくれる」という神話の中で生きていた。

すべてを国任せにする考え方から抜け出せないでいたのである。

かつての支配者である“国”に代わり、“企業”にその役割を期待していたのである。

企業も住民との軋轢をさけるため、病院などの社会整備を行ってきた。

しかし、住民が本来行政が行うべき政策も求めるようになり、方針を転換したのである。

それは、かつての国が行った独裁的な手法である。

 

取材陣が住民にインタビューを行うと、

はじめは事故のことや会社の不満について話してくれるが、

途中から何も話さなくなってきた。

住民の口を封じるのは、住民だった――

 

このドキュメンタリーでわかることは、

住民の要求は“被支配者”としての要求であったことだ。

社会環境や生活に関わる要求であり、鉱山の操業停止を求めているわけではない。

ゆえに、従業員であるといい企業ではないが、

そこから賃金をもらってるので何も言えない住民が増えていく。

キルギスの現状は、

日本もムラ社会や企業風土にありがちの“被支配者”の生き方の問題だ。

民主社会とはいったい何なのか…

参考URL:

BS世界のドキュメンタリー シリーズ ソビエト崩壊 20年 第1週 「キルギス 遠き民主社会」

http://osusume.starcat.co.jp/pickup/pickup.php?t=detail.html&event_id=B1258

イシクル湖でシアン流出・クムトール向けトラック横転

http://www.jogmec.go.jp/mric_web/news_flash/98-24.htm#%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%82%AF%E3%83%AB%E6%B9%96%E3%81%A7%E3%82%B7%E3%82%A2%E3%83%B3%E6%B5%81%E5%87%BA%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%A0%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%90%91%E3%81%91%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E6%A8%AA%E8%BB%A2

 キルギス、クムトール金鉱山へのアクセス道路の封鎖を住民が解除

http://www.jogmec.go.jp/mric_web/news_flash/05-30.html#%E3%82%AD%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%82%B9%E3%80%81%E3%82%AF%E3%83%A0%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%AB%E9%87%91%E9%89%B1%E5%B1%B1%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B9%E9%81%93%E8%B7%AF%E3%81%AE%E5%B0%81%E9%8E%96%E3%82%92%E4%BD%8F%E6%B0%91%E3%81%8C%E8%A7%A3%E9%99%A4