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Amazon「売り伸ばし説明会」(京都)に参加 その2

前回

http://tonybin.hatenablog.jp/entry/2012/11/02/153723
Amazon「売り伸ばし説明会」(京都)に参加 その1

の続き。
10月25日(木)のAmazon「売り伸ばし説明会」(京都会場)のレポートです。
内容は以下の5点。

  1. Amazon.co.jpについて」「書籍市場のこれから」
  2. プリントオンデマンド(POD)
  3. e託販売サービス
  4. ベンダーセントラル
  5. Vineプログラム

今日は3~5についてのレポートです。
といっても、細かい数字部分は公表出来ないです。

 

まず「e託販売サービス」について。これは、出版社以外の人には聞いたことがないかもしれないが、我々にとっては重要なサービス。簡単に言えば取次(主に日販、大阪屋)経由で納品していた書籍を、取次を排除して直接Amazonと取引しませんかと言う話。直取引することで「在庫あり」率が高まり、閲覧者が購買する可能性も高まり、結果的に売上に結びつきますよと。

なぜ「在庫なし」になるのか? それはこれまでさんざん言われてきた取次経由の納品体制にある。Amazonから発注された注文は、取次で入力され「電算スリップ」として紙で出力され、それを出版社に郵送。このスリップを出版社が集計し品出しして、取次に納品する。納品された書籍を、取次が書店やAmazonへ配送する。平均で12日。書店(Amazon)で注文出して12日後に届いたんじゃ読者もあきれるって。書いていてもややこしいし。もっと単純にならんのか? 当然だ。メリットはまとめて出荷するので返品や納品の郵送コストが安くつくこと、あとは新刊委託(ややこしいので今回は触れない…)ぐらいか。

ここで重要なのは、Amazonも現在のところ「取次」という魔力から逃れられていないということ。つまり、在庫がない書籍は、Amazonであろうと書店であろうと届く過程は変わらないってこと。なんかイメージ的にAmazonは速いという先入観が読者にはあるようだが。分かっている人は、出版社に直接注文するか、ありそうな書店で購入する。Amazon依存ではなく、書籍の購入は使い分けた方がかしこい。

話がそれた… Amazonは、そのまま黙っているわけでなく出版社と直取引をしてその過程をショートカットしたい。書店との差別化を“もっと”はかりたい。それが「e託販売サービス」だ。このサービスでは、Amazonから直接出版社に発注が届く。だいたい週3回ペースだそうだ。搬入は毎日可能。そのための「e託集荷サービス」も用意されている。1箱(だいたい12キロぐらい入る)350円だ。某社の比較によると導入することで出荷金額が23%アップといいことずくめのよう(あくまでAmazonさんの言い分)。参加出版社は2,420社で約5分の1の出版社が参加済み。参加費は年間9,000円。支払いは正味60%の翌々月。返品は元払返送、ただし搬入不良による返品は着払。このへんの条件は微妙である。正味は大手取次より低いし、年間費もかかる。うちのような零細出版社では厳しいのかもしれないが、ユーザー目線で考えると常に在庫がある状態はうれしい。難しいところではある。

 

次に「ベンダーセントラル」。これは、Amazonの「商品情報」を管理するツールで、Amazonに在庫を持っている出版社は使っているはずだ。細かい説明は省くが、予約注文を積極的に活用しましょうという話だった。注文期間が長いとそれだけ売れますよということ。まぁその辺はわかってるんですけど、なかなか出来ないんですよね…

 

そして最後に「Vine先取りプログラム」。これいいのか… まぁ簡単に言えば献本プログラムのこと。つまり質の高いカスタマーレビュアーに献本してレビューを書いてもらおうというシステム。知ってましたこのシステム? これを出版者側でお願いできるシステムがあるよということ。つまり本のレビューを書いてよと出版社側がお金を払って依頼できる(レビュアーへの報酬はない? このへんよくわからん)。献本は50冊までなら何冊でもOK。発売前の予約商品のレビューも可能ということ。そういえば、発売直前直後にレビューがあったのはこれだったのか。納得。

「Vineプログラム」は2年前から行われていたようで、

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20100617_374956.html
Amazon.co.jp、商品の先行レビューを依頼する「Amazon Vine」プログラム開始 -INTERNET Watch
(2010/6/17 11:47の記事)

通常のレビューと区別するために

Amazon Vine™ レビュー (詳しくはこちら)

↑これがついているのが、 「Vineプログラム」を使ったレビューだそうだ。

これってどうなんでしょう。特に気にしていなかったけど気になってしまう。「Vineプログラム」を使うことで売上があがるという話だが、★が4~5つくことを想定しているような気もする。登録料も結構な値段。上製本40冊分ぐらい… レビュアーはこれまで質の高いレビューを行ってきたユーザー、つまり何百、何千とレビューを書いてきたユーザーだから安心なのだろうけど、読者にとってメリットが無いわけではない。つまり、レビューが少なく判断しかねる本を買い控えることがあるからだ。版元にとっても、★が少なくてもとりあえずレビューがほしい。これがうまくマッチしたのかもしれない。読者が許容しているのであればいいシステムなのかもしれない。というか 「Vineプログラム」というマークを気にしている人なんているのだろうか。

うちの会社は値段的に無理っぽいが…

今回Amazonの説明会に参加して、いろいろ勉強になった点もあるが、Amazonの方向性に度肝を抜かれたというか、日本の出版界を牛耳る、根こそぎ持って行こうとしてるなという感じに正直やられた。のろのろしている現在の出版界では対抗できないかも。まぁ対抗する必要もないかもしれないが、独占状態は危険だと思うんで取次も含めた改革が必要だなと思う… あ、今の取次も寡占状態だからAmazonのことは言えないか…